森別邸竣工ー4.

玄関を通り越すと広間前の庭に出る。
杉皮張った穏やかな塀に沿って、柔らかな樹木が景色を作る。
張り出す濡縁前には白州が大きく広がり、飛石打った苑路は緩やかに弧を描くように周りを囲む。白州は次第に苔地へと繋がり、平庭が広がる。

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               <広間庭から見た外観>
当初予定されていた建築から変えたこともあって、入側の下屋を登らせ入母屋の重ね妻で東面を纏めている。屋根には仄かな起りをつけて軒先を落とし、銅板の腰葺きが一層の軽快さを演出する。
濡縁の材料には栗を用い、月見の宴など実用に堪え得るよう広々とした大きさを確保した。濡縁の縁先には棗型の手水鉢も据え、広間での茶の湯の用に充てている。
アプローチからは大きく飛石打って広間前の庭に誘い、延石混ぜた苑路が茶室へと向かう。古瓦を混ぜ打ちした延段を越すと形も小さく、草履ひとつに石が連打される。まるで漏斗に流れる水のように空間は絞り込まれ、急激に密度を高めていく。凝縮されることで緊張は高まり、向かう茶の一境をことさら鮮明にしている。
行く手に立つのが梅見門で、白竹打った格子戸の向こうに、茶の湯の世界が広がる。

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                   <梅見門>
梅見門を潜ると途端に空間は解放され、樹木越しに茶室の屋根が望まれる。
茶室の手前には赤松を配し、モッコクやカシ、モチなど優しい木々が全体を覆う。
ここで左右に飛石が分かれ、左に行くと周遊する庭園苑路へと繋がり、右に曲がればすぐ横が腰掛けとなって、茶室の露地への導入路となる。
露地に打った飛石は以前紹介したが、ここに至って植裁もより穏やかに、アオキ、サカキ、モッコク、ヤツデ、アラカシなど、蹲踞から茶室へと向かう露地をしおらしく纏めている。
広大な庭にあって、ここは異次元の別境といえるだろう。
庭を構成する樹木や石などはもちろん、梅見門の高さも頭を下げて潜るなど全体にスケールダウンした寸法で貫かれ、握る拳のごとく意識が集中されることで空間が形作られる。

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              <梅見門を潜り茶室方向を見る>
座敷の北面は3尺の板縁をつけ、露地庭に面して下屋を差し掛け外観を纏める。
南庭とは異なり、ひとたび障子を開け放てば茶室に囲まれた一境に意識は水平指向し、庭屋一如の空間を奏でる。
下屋は庭を座敷に呼び寄せ、姿も瀟洒に続く露地や茶室と相まって、和やかに空間を包んでいる。
 (つづく)

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                 <北庭から主屋を望む>


  (前田)

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