鬼を作る

庭のハナミズキが満開になった。
桜と違って、枝につく白い花弁が一斉に開くので、華やかさが際立つ。
我が家となると私も無精で、手入れも構わず放ったらかし。
それでも春ともなると花をつけ、目を楽しませてくれる。

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             <茅葺きの家のために作った鬼瓦>

先日、久し振りに三州の梶川さんの工房へ寄った。
梶川さんは代々鬼師の家系で、碧南市に工房を構える。鬼師とは鬼瓦を専門とする職で、城郭や寺社などに取り付く身の丈を越える鬼まで作られる。
初めてお会いしたのが、いまから16年ほど前で、以来小さな建物ながら、機会を得るたび梶川さんにお願いしてきた。
梶川さんは彫刻や日本画も勉強されており、その感性をもとに作られる鬼は、他に類を見ない自由闊達な造形に特徴がある。まるで生き物のような質感、今にも飛び出してきそうな迫力、見るものを笑顔にする魅力を湛えた鬼だ。
先に戴く下絵も見事で、和紙に筆で一気に書かれるさまは、それ自体が絵画としての価値を感じさせるに充分である。

今回は串本の町家で、施主から是非にと請われ、紹介するため立ち寄った。
私に設計を依頼されたときから、鬼瓦は特注で作って欲しいと望まれ、施主もお会いするのを楽しみにしていた。すぐに打ち解け、要望を述べられていたが、工房には所狭しと、これまで作られた作品の一部が飾られているのだが、その迫力には圧倒されたようだ。
ちょうどその折り、茅葺きの家でお願いした、二つの鬼が出来ていた。
恵比寿大黒の対となるものだが、その顔の表情が素晴らしい。
鮎屋である施主の発っての希望で、鯛に代わって恵比寿は鮎を抱く。竿はかかえる姿が一般的だが、それでは動きが乏しいと、敢えて竿を別に作って持たせることで、佇まいを生き生きとさせる。そういうところに梶川さんの創作における心意気を感じる。(竿はこれから作り、右手に持たせる)
作るものには人柄が現れるというが、この鬼を見れば、誰もが直ちに納得するだろう。

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                   <各種の型紙>

建築の直接的な造形ではないが、こうしたことを先人らは大切にしてきた。
規格品ばかりで組み立てる建築で良いのだろうか。
梶川さんのご子息が帰る駅まで送ってくれたが、今の人は感情の襞が摩滅しているようだと語られたのが印象に残った。

  (前田)

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