伊勢市観光協会竣工2.

内部1階は会所として、多勢の集まりに備え、2階に事務機能を集約した。
情報過多の時代、行くところも決めずに旅するひとも希だろうが、旅の最も鮮烈な記憶は、そこでの人との出会いや会話だという。
そんな旅人を迎え、送り出す、暖かい空間にしたいと思った。

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                  <土間とへっつい>
                      
内部は板間で、建具を開け放つと52畳という大きな空間になる。
さまざまな催しに集いに、活用いただければ本望である。
道路に面して大きな小上がりを、その奥に、枯庭に面して2間を設けた。小上がりは常に開放され、気軽に上がり込んでもらって構わない。ひと休みに寝そべっても結構ですよ、と西村専務も話していた。
すべて開いているため、夏でも風が抜けて気持ちいい。
正面向かって右には大きな土間があり、ここがこの家の台所である。
土間にはへっついがおかれ、行事の際には薪をくべて、湯茶の接待が行われる。
へっついは左官の西川君が、いつもながらの丁寧な仕事をしてくれた。わざわざ沖縄まで材料調達に行ってくれたらしい。灰掻口はアコヤガイの研ぎ出しである。

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                   <会所の板間>

奥は15畳の2間となり、縁を設けて枯庭が接し、塀越しに外宮の森を見る。
私は枯庭でいいと思ったが、秋には寄贈を受けた樹木が植わることになり、これはこれで華やかな装いとなるだろう。
天井は2階の床組を見せた根太天井とし、厚さ1寸の杉板を張る。梁組はすべて松材とし、柱には檜を使った。予算もあって美材では整え難く、木部に色付けを施し、なだめている。
場所によって材種が異なるため、色付けには難儀を掛けたが、こうすることで節があろうと目に立つことはない。どの材も見てくれは美しいとはいえないが、目の詰まった良材であることには違いない。
こうして色味を揃え、美観を整えることは古くから行われていたことでもあって、これも日本の知恵のひとつである。

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              <枯庭塀越しに外宮の森を見る>

大工は堀崎組きっての精鋭、世古吉郎が棟梁を努めた。
何より頭脳明晰で、図面を読む力は素晴らしく、私の意図を違えたことがない。仕事に厳しい人で、若い頃から人の仕事を見てはそれを吸収し、今では当地屈指の技術力を蓄える。
鬼瓦はいつもの、三州梶川亮治にお願いした。
図案が浮かばなかったので梶川さんにお任せしたが、雀はどうかという。多くの人が集い楽しむ場を描いてのことだろう。ふっくらした雀は「福来雀(ふくらすずめ)」といって縁起もよい。
そのようなことで、屋根の至るところで雀が踊ることとなった。

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                   <縁と枯庭>

物見台からは外宮の森が一望でき、祭りの格好なスポットになるだろう。
竣工時には地元のテレビ局が紹介してくれ、新聞各紙も大きく取り上げてくれた。
これらメディアの人も、伊勢の建築様式はまったくご存じなかった。隠れた名物は知っても、やはり建築は多くの人に、遠い存在なのだと知らされた。
それでも取材では熱心に尋ねてくれ、新鮮に映った彼らの目が、その記事から伺えたのは幸いだった。

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           <物見台から屋根越しに外宮の緑を見る>

  (前田)

  設計監理    前田 伸治
            暮らし十職 一級建築士事務所
  施  工     株式会社 堀崎組
  事業主     社団法人 伊勢市観光協会

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