東京S邸竣工ー4

細目格子の戸を開けると、両親の玄関になる。
和を望まれたことから、少々数寄屋の味付けをして導入路とした。
正面を大きく開き、戸を開けた途端、敷地いっぱいの奥行きが飛び込む。
閉じたアプローチと一転して空間が広がる。

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                <両親玄関から庭を見る>

天井は化粧屋根裏、杉小丸太を配って木舞を渡し、杉板を薄く羽重ねに張る。
天井裏の、構造梁とのわずかな間隙を縫って形に整えた。玄関土間には玄昌石を、床板には赤松を張った。
家の各所にこの赤松を使ったが、実はこの板、端材を加工したものである。
梁とか長尺の板類を取った後の材で、写真をよく見ると分かるが、相当短いものも含まれている。市販のフローリングだと、およそ継ぎ目が互い違いに揃っているが、こうしてランダムに張ると、ほとんど継ぎ目が気にならない。
以前、伊勢の高山棟梁から教わったのだが、こうすることで端材を活かすことができる。しかも無垢の木でこれだけの床を整えるとなれば、金額的にもそう簡単なことではない。資源の有効活用はこれからの時代の必須である。
左の板戸を開けると、客間へ通じる廊下となる。

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               <ダイニングより中庭を望む>

飾り棚を横目に大きな格子戸を開けると、そこが両親の居住空間となる。
客間との間が中庭となって、緑を伺いながら庭に沿って住空間が連なる。
そのためにも、客間の軒を低く抑える必要があった。
建ちが高ければ何より鬱陶しいし、日当たりを削ぐことになりかねない。居住スペースにとって庭を挟んだ客間の外壁は、庭を含めた内壁と同等で、その点を意識して意匠を整えている。
家具も極力造り付けとし、生活空間を広々と取るよう配慮した。
ダイニングと続きの和室が茶の間で、その隣が寝室となる。
天井は各室とも上階の床梁を現した、いわゆる根太天井と呼ばれるもの。
4尺間に配った床梁に、1寸厚の床板を張る。化粧に天井を張ってもいいが、木組みがしっかりしていれば、敢えて体裁を飾る必要もないかと、座敷以外ではこうした取り組みをしている。

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               <茶の間からダイニングを見る>

ここから見る庭は、客間と趣を異にし、私室に付するものとして密度を上げた。
お母さん望みの松を中心に、以前から植わる木も含め、私の考えで配り直した。
祖母ゆかりの清柳、ご成婚時に植えられた梅など、大事な想い出とともに、今までの住まいから移した樹木も多い。
庭は、遠路厭わず、加藤孝志が手掛けてくれた。

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                  <廊下から庭を見る>

当初お父さんは、自身で建てた家を手放したくなかったようだ。
子育てや夫婦の成長、家は家族の歴史そのものなのだから当然である。
そのお父さんが工事も終盤になって、
「この家なら移っても良いと思うようになった」、といった。
ご子息とともに住むという感慨もあるのだろうが、この家に込めた魂魄も受け入れられたのかと、作り手のひとりとして、やはり嬉しかった。

  (前田)


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この記事へのコメント

尊8
2010年04月16日 15:34
毎日ブログ更新楽しみに拝読しております。
桜が咲いたと思ったら、東京は真冬並みの気候に逆戻りです。こうして不順な天候が続くと、あらためて地球温暖化が進行していることをヒシヒシと感じている今日この頃です。17年波乗りを続けていますが、海でも同様に感じられることがあります。それは、浜辺の浸食進行です。昔は波打ち際まで入れた車が、今では入れない海岸が増えているのです。大きな低気圧や台風の度に浸食が進んでいるのです。明らかに海水の温度も2~3℃上昇していますし、海面も上昇しています。近い将来、自分の大好きな波乗りが出来ない日がくるかもしれません。。。本当に怖い事です。。。
そんなこともあり、数年前よりエコロジーに心掛けるようになりました。自然と触れ合っていると、そういう事にも関心が持てるようになりました。
木の再生や有効活用は世界共通の環境テーマですし、今後更に浸透しなければいけないことだと思います。海外先進国に比して日本は出遅れており、国内でもこうした取り組みに先行した企業が次代を担う事になると確信しています。
O2を出してくれる緑も重要ですよね。先回の緑についての言葉、自分も勉強になりました。ありがとうございます。これからも沢山のご教授の程、宜しくお願い致します。
追、4/18旧家売却決定しました。思い出が詰まった家を手放すのは、自分も寂しい気持ちです。幸い取り壊しせずリフォームして使って貰えることになり、ありがたいです。これもエコですね(笑)これが決着するとようやく一段落できるかなといった感じです。近況報告までに。
前田
2010年04月18日 11:59
尊8さま
この気候不順にはちょっと驚きですね。先日から出張続きで、伊勢~岐阜~盛岡と行って、今日戻りました。
また冬のジャンパーを出して着ていきましたが、それで丁度良いというのも、とても4月とは思えません。
くれぐれもお身体ご自愛下さい。
旧お家もご売却がお決まりになられたようで、新旧交代に伴う寂しさを私も感じます。その思いを今度の新たなお家の愛情に振り向け、ご家族の一層の繋がりあるお家となられますことをお祈りしております。
また引き続き書いていきますので、宜しくお願いします。

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