森別邸竣工ー2.

紅葉の下を上っていくと、左に回り込むように苑路が折れる。
曲がった途端に樹間から滝音が聞こえ、茂み越しに一気に視界が抜ける。
歩く先には、流れが滝からしぶきを上げて走り、静かな表門からの佇まいは、一転して躍動感に包まれる。

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                <苑路から見る滝口>
山深い木立に設えた滝口に、組まれた三尊石が樹影の間に姿を現す。
間近に迫る滝はダイナミックに連続し、異なる落差に水音が響く。
流れには左右から松が枝を伸ばし、石の袂を覆う緑は水際を一層際だたせる。
また滝へと向かう溜まりには沢渡りが打たれ、意識をともに対岸へと苑路を繋いでいる。水面わずかに据えた飛石が、迸る水の勢いをひと際強く訴えかける。
これは、滝を組み直す中で、加藤さんが打ったものだ。
歩く調子と水の深さが、塩梅よく仕上がった。

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                     <沢渡り>
滝口を離れ、池を遠望しながら緩やかに池畔を巡ると、その先に四阿(あずまや)が見える。回遊苑路の休息はもちろん、庭の点景としての存在に期待した。
わずか6畳ほどの大きさに、屋根を浮かせ軽快に作っている。
一見、何気ない風情だが、細い丸太を駆使してこの形にするのは並大抵ではない。大工も左官も、相当の技術が必要で、何気ない納まりほど逃げが効かない。
至って材寸を大きく作れば仕事は簡単になるが、この雰囲気は生まれない。
用だけで建築が成立しない所以である。
形と技術は一対で、そのせめぎ合いが美しさを生み、造形に命を与える。

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               <苑路の先に四阿が散見される>
丸太仕事はその最たるものかも知れない。
自然の材を活かし組む仕事は、技術だけでない呼吸が求められる。
ひとつと同じものがない材料だからこそ、見立てる目と、取り合わせる力が大切で、自然を尊重する心持ちを養い、息を合わせる謙譲さがなければなし得ない。
それを背後で纏めるのが寸法力で、周到に組まれた寸法の構築が、存在を確固たるものにする。それは単にデジタルな数字を指すのではない。
自然を見つめる洞察力と、何より美への執念が寸法を選ぶのである。
そこに、形と技術の融合が生まれ、みなぎる緊張感が空間を引き締める。
そこはかとない雰囲気と点景の役割は、こうして生まれる。
 (つづく)

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                    <四阿内部>
 (前田)

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