森別邸 細部計画 2.

石巻、森別邸細部計画の続きを。
庭との馴染み良く、建物は南西の矩の手に配置された。
広間の茶室を主体とし、日常使われる部屋などをまとめた迎賓施設の核となる建物である。

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                <玄関から次の間を見る>

茶室を生かすため、まずは茶の湯に使える環境を整えたい。
茶事には茶室だけでは不十分で、取り囲む露地を整えるとともに、寄付を伴った広間の茶室を設けることとした。座敷は迎賓対応にも必要で、庭を挟んで茶室と向かい合うこの場所が、最もふさわしいと判断した。
延段打ったアプローチから、客は玄関に迎え入れられる。
南向きに門戸を開いて式台を設け、1間幅の取次を経て次の間へと続く。
次の間向かって右手に広間を連続させ、次の間裏には水屋も設けた。
玄関からは、次の間越しに視界は茶庭まで広がるという寸法である。取次や次の間は、茶事での寄付としても意識し、次の間伝いに庭から露地へと向かう飛石も打つ。

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                   <広間 床を見る>

広間は8畳敷きに床脇1畳からなる9畳敷、正面に1間の床を設ける。
床と並ぶ正面に付書院をあしらい、天井を掛込みにして床と取り合わせた。
次の間境の襖を外せば17畳敷となり、客を迎える正座敷としての風格を備える。
客は取次から入側を経て、座敷へと招じ入れられる。入側に沿って坐せば、座る視線の障子越しに、露地から茶室が望まれる。両室とも勝手付きに炉を切り、広間の茶室としても対応する。

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                <入側から広間庭を望む>

1間幅の入側には畳が敷かれ、広間の庭に面しては月見台を設ける。
数寄屋門から続く塀は、杉皮を張った柔らかな意匠とし、白州から苔地へと続く庭は、囲まれた中にあっても爽やかさを狙った。植裁も穏やかな常緑を主体に、落葉をアクセントに添えている。
月見台手前には縁先手水鉢を据え、広間での茶における手水の用に充てる。
白州に打たれた延段は、やがて飛石へとつながり茶室へ向う露地に結ばれていく。

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              <広間庭から梅見門へと向かう>

白州と苔地の境を伝うように飛石が打たれ、延段を混ぜ、単調さを避けながら歩む先に梅見門が立つ。広大な庭にあって、茶の湯の空間を示す結界としてである。
門に近づくにつれ、徐々に飛石も小さく歩幅も短く打たれ、歩々に茶の湯への心持ちが醸成されていく。門を潜ると樹影の間に茶室が散見され、右に曲がれば腰掛けから茶室への露地になる。

露地については、前回現場の様子を交えて紹介した。
右手の延段の先が、その露地である。
向こうに見える茶室を取り巻くように露地が作られ、中心には蹲踞が坐る。
左に伝っていく飛石と延段は、庭を回遊する苑路に連なり、次の間縁先から打たれた飛石が合流する。
広間から見た、茶室前の風景である。

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                 <広間から茶庭を見る>

いずれも計画時に書いた絵で、実際とは多少異なるものの、植裁を終わって見直すとかなり真に迫っている。現場にあって、無意識に庭師を督励していたのだろう。
私が関わる直前には、西側寝室の建て方が始まり、北側には移築したこの茶室も完成していた。これら条件の枷を、丸ごと呑んで立て直した全体構想である。
が、経過を差し引いても、私が思う建築や庭園の仕上がりになりそうだ。
現場は、これからが最後の詰めになる。
まだ石巻通いは続く。

  (前田)








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この記事へのコメント

くろさか
2009年04月16日 20:29
これまでの記事を何度か読み返して、漸く全体像が掴めてきた様に思います。大きな仕事ですね、凄いです。
全くの新規ではなく、既存がありながらの全体の仕事、想像するだけでも大変さが分かります。特に茶事空間ですからね、意図にそぐわない処なども、お有りの中の仕事とも察します。石巻も櫻の頃でしょうか、四季を楽しめる日本の庭、そして日本建築。やはり惹かれますね。
前田
2009年04月17日 22:16
コメントありがとうございます。
なかなか全体を語る機会がなかったので、失礼しました。時間に追われるばかりで、他の仕事も紹介したいものはあるのですが、なかなかゆっくりできません。
今回は最初にクライアントの森先生から「前田先生の仕事にしてください」といわれ、それならばと奮起したものです。既存の制約に屈せず、すべてが自分の仕事として完結するよう努めております。庭もいろいろな展開ができており、石巻に伺うのが楽しみになっています。
追々紹介させていただきます。

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