家のつくりやうは夏をもってすべし

いよいよ終盤に差し掛かってきました。
彼の兼好法師の言葉ですが、この言葉の中にも日本という中で建てる家のあり方が、説かれているように感じます。前置きはとにかく、本論を聞きましょう。

~ 家のつくりやうは夏をもってすべし ~

草柳大蔵さんの著書に書いてあったんですが、ある時高橋義孝さんと対談したときのこと。料亭で行われたそうですが、その時高橋さんが
「本当はこういう場所で話し合うのですから、浴衣でも着てくれば良かった良かったですね」
と前置きして、
「でも、浴衣を着るとすれば、簾に釣忍ぶ(つりしのぶ)に蚊取り線香も必要ですね」
と仰ったそうです。
これなどまさに当を得た発言で、浴衣といったらそれに付くものがある、これが夏の室礼なんですね。
日本人なら恐らく誰でも想像できる夏の姿、夏を過ごす知恵でもあるんでしょうね。

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また日本家屋で忘れてはならないのが縁側です。
縁側でスイカを食った、そんな想い出は多くの人が持っていることと思います。
この室内とも外部とも取れる空間があることによって、日本家屋は豊かな表情を見せることに成功しました。屋根は掛かっているれど建具がない、また建具はあるけど室内とは言いづらい。
そんな空間が家を取りまいていることで、外の空間と緊密な相互貫入が生まれ、独特の空間を作り出しました。
私たちが住む家は、玄関があってそこから家へと上がることを常としていますが、本来の日本家屋は外から直接上がる、という形式もありました。
茶室の躙口を見ても分かりますが、露地という庭から直接座敷に上がるようにできています。
そのため外には深い軒が差し出され、雨が多い環境もその要因のひとつですが、夏の日差しを遮る役割もありました。

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彼の兼好法師も徒然草の中でそのことを言っております。
ちょっとご紹介しましょう。

  家のつくりやうは夏をもってすべし 冬はいかなる所にも住まる
  暑き頃わろき住居(すまい)は堪えがたきことなり
  深き水は涼しげなし 浅くて流れたる、遙かに涼し
  細かなものを見るに、遣戸(やりど)は蔀(しとみ)の間よりあかし
  天井の高さは、夏寒く、燈くらし 
  造作は用なき所をつくりたる、見るもおもしろく、よろづの用に立ちてよし

家屋を設計するときは、夏の住み安さが原則である。冬はどんな寒いところでも住むことができるが、暑い家では住みづらい。庭の水は深いと涼しさが感じられない。水は浅くて流れているのが涼しげで良いものだ。
細かい字を読むには引き戸の部屋が、蔀のような吊戸より明るくてよい。
また天井の高い家は冬寒く、灯りをつけても暗い。家を建てるならば、用途を特定しない部屋を作るのが、見た目にも面白さがあるし、色んな役に立って良い、ということなんです。

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その点、深い軒の出は我が国の夏を乗り切るには欠かせないものでした。
梅雨の長雨で、じめじめした時でも室内の建具を開け放しておくことが出来る。吹き降りの雨が多い環境では、軒の出を深くすることによって外壁を痛めることがない。何と軒の出が15㎝深くなることで、壁の雨掛かりが25%も減少されるらしいです。
軒が深ければ夏の陽射しは室内に届かず、その照り返しも防ぐことができ、一層涼しい空間を作り出す。日陰が家全体の温度環境を改善しているんです。

そもそも日本の家屋は床を高くし、床下の通風を計り湿気を防いでいますが、これなども高温多湿の我が国ならではの対策でしょう。
夏になるとこのように簾戸に替える。座布団も麻になり、畳の上には籐筵が敷かれます。
軒先には簾が吊され、家中を風が吹き抜け、風鈴の音が涼を奏でていく。

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またこのように開け放たれた室内では、自然と視線は外に向かいます。そこには緑に彩られた庭があって、青空には雲が沸き立つ。美しい自然への親しみが、この小さな空間の中に遺憾なく採り入れられて、自然と一体に溶け合うことで私たちは夏を克服してきたようにも思うんです。
ある意味、これが日本という環境で暮らす、合理的な解決法だったのかも知れません。


如何でしたか。
夏、という中にも、家の造作の細かい部分が結構一役買っているんですね。
面白く拝聴しました。
次回はー陰翳の効用ーです。
どうぞ引き続き、ご覧下さいませ。

  (かりの)

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