山口邸竣工(3) リビング~キッチン~ダイニング

和室から20畳のリビングへと繋がる。
上階まで大きく差し掛けられた吹抜に、登り梁の存在感が空間を彩る。
2間半に掛かる登り梁は、丸太を曲がりなりに八角に落として使う。
もつ強度を損なわずに、造形に反映させるためである。
今に始まったことではないが、こうした木づくりひとつに日本の造形がある。
丸太のままの梁と比べ、どれほど空間に与える影響が大きいことか。

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自然の素材は、手を掛けることで人に近いものとなる。
自然のままが一番というのは幻想で、その自然が”生”ででると、空間として馴染みにくい。手を掛け、馴らす中で、次第に人に寄り添うものとなる。
これも大工仕事のひとつの側面である。
手懐ける努力が、自然を扱う上では欠かせぬ大切な仕事だと思う。

リビングに向かってキッチンが対面する。
奥さまがこだわったところだ。計画当初は矩折れのキッチンを希望されたが、予算の都合でフラットになった。しかし、それでも意を得なかったのだろう。
思案の末、背後の壁面にレンジを組み込み、2列使いの形に固まった。
北壁に面してレンジを、流しがカウンター越しにリビングと対面する。
天井が吹抜ける中、手元明かりの確保が悩みどころだったが、カウンターにショーケースライトを立てて解消した。意匠にもひと役買ったようだ。
和室とリビングの間は引き込み戸を入れ、開け放たれる。
リビング南庭に面する二つの窓も同様である。
障子、ガラス戸、網戸、雨戸が収納され、時々によって引き出され、開放される。
全て開け放てば差し出されたデッキが南庭へと繋がり、庭が室内に流れ込む。

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このようなLDKの間取りは、今やあたりまえになったが、食事の場とくつろぐ場を、同じ室内で接続させるのはそう簡単ではない。
ダイニングは食事のため、リビングはくつろぐためと、その違いを知りながらも、何ら工夫なくソファーとダイニングテーブルが並べられていると愕然とする。
存外、空間として成り立っているものは少ないのではないだろうか。
同じ室内でも、機能に沿った空間の配慮がないと落ち着かないものである。

ここでは、リビングと直行する形にダイニングを接続した。
キッチンとは密接に繋がるが、リビングとは空間を異にし、互いの目線が交わらない配慮をしている。このダイニングで四畳半強。
天井を思い切って下げ、そのかわり大きく窓を取り、庭と繋げる。窓とテーブルの高さを合わせ、座る視線の先に、別空間の庭が展開する。
こうすることでダイニング独自の空間が演出され、家族の食卓が生まれる。
窓を天井まで開けたことで空が取り込まれ、朝日が燦々と注ぐ。
周囲の視線に備え窓外に簾を回したが、これも雰囲気をもり立てているようだ。
食器棚には、民家を好む奥さまに応え、水屋箪笥を造り付けた。

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リビングからは、2階子供室への階段がかかる。
そのためリビングの上方隅に抜けが生まれ、一層の広がりを感じさせる。
南に開けたスリットの光は刻々と変化し、リビングの空間を生動させている。

  (前田)

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この記事へのコメント

くろさか
2008年01月24日 16:42
リビングに差込むハイサイドライト、とても印象的です。
L・D・K、それぞれが同じ空間に連なりながらもそれぞれの用途を大事にし連続させる、落着きますね。豊かな空間、それは面積的なもので無い事が分かります。そして「2尺3寸」腰廻りを統一すると、たったそれだけで内部の統一性と外部空間への連なりが見えてきます。このダイニングスペース、とても良いですね!お洒落な和風レストランのよう。若し自分の家ならば食事だけでなく普通に仕事もここでやる姿が想像されます。低い天井(7尺?)窓、2尺3寸の窓台そしてリビングとの距離感、絶妙と思います。この何とも言えない外との繋がり感が実に良いんですよね。本当に良い住まいですね。
前田
2008年01月26日 12:19
使う寸法というのがあるように思います。
きっと私たちの身体寸法から発しているのかも知れませんが、少なくとも私にはあるようです。家具や設備など、ある決まった寸法を建築に置き換えて全体を統一する。上手いことばかりには行きませんが、なるべく考えてやっていこうと思います。
大きな空間と小さな空間が混じり合って、それぞれの役割を果たす。そういった集合体が住宅なんだと思いますね。

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