広間と桐板(茶の湯サロン4,)

茶室だけで茶の湯はできない。
点前だけで茶事が成り立たないのと同じである。そのように露地は茶の湯へのタイムトンネルみたいなもので、露地がない茶室は”本格的な茶事には使えない”、といっていい。
階段を上がると鞘の間が中央を走り、上階の空間を2分する。
向かって右側が広間、左手が小間となる。

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この鞘の間を設けることで、二つの茶室がそれぞれ独立した使い方ができる。
しかも互いに境の建具を取り払えば、一室ともなる。まさに日本建築の特色でもある。
まずは広間から見てみよう。

広間は8畳。正面に床を設ける。
中央に床を設け、右側客付きに琵琶台を備える。
床柱は杉磨絞丸太、床框には杉磨丸太入節を入れ天端に真塗りを施す。琵琶台横には書院を設け、床柱から一本に落とし掛けを通した簡素な意匠とした。
天井は杉中杢板を羽重ねに張り、鞘の間との境には板欄間をはめる。
琵琶台下のケンドンと欄間には桐を使った。

茶の湯の座敷は、茶道具と一緒でそれだけが引き立ってはいけない。
全体の取り合わせの中でそれぞれが調和して、空間が整えられねばならない。
目に立たぬよう、しかも調和を乱さぬよう細部まで念入りな仕事が求められる。
寸法には、特にうるさく申し上げた。
些細なチリ寸法や、メンの落とし方、床柱と框の取り合いなどは直しても貰った。
そうした細かな積み重ねが、全体の雰囲気を形作る。
最初に雰囲気ありきでは、建築は出来ないのだ。

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桐板は左座さんが用意した。
現場では良材が揃わなかった。中国産なら、とも思ったが左座さんが納得しない。そこで自ら、京都に掛け合いに行った。

彼が京都で修行中のこと。指物師の親方に随分薫陶を受けたらしい。
道具屋にとって箱は大切なもの。
が、その箱を巡っては、いわれぬ職人の思いもあったに違いない。
親方の職人魂に、駆け出し道具屋として諫められることもあったのだろう。
きっと応えてくれると勇んで伺った先、親方はすでに他界されたとの報。
奥様から、「左座さんが普請されたと知ったら、きっと喜ぶことでしょう」
そう仰っていただいたと聞く。

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建具全般の製作は、「手嶋建具店」の手嶋さんが一手に引き受けてくれた。
杉も秋田の赤味を揃えてくれ、丁寧な仕事で応えてくれた。
「こんな仕事をさせて貰えて幸せです」
実直な人柄らしく、細かく熱心に尋ねながら、神経を漲らせた仕事をしてくれた。

桐板は先方のご厚意で、親方が残してくれた最も上等な桐を、形見分けにお譲りいただくこととなった。早速、手嶋さんが建具に作って納めてくれた。
左座さんにとって、代え難い思いを刻み残せたに違いない。

  (前田)


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この記事へのコメント

くろさか
2007年11月17日 10:19
時の経つのも忘れ只々写真に見入っております。写真も流石です!ISO100でシャッタースピードを長めで撮影、微細な質感を見事に捉えていますね、参考になります。そして何よりも出来上がったこの空間の醸す空気!圧倒され言葉が出てきません。記事にありますようにホンの小さな面のとり方やチリ廻りの取合いでおかしな所があればそこだけ浮き出てしまうもの。当方は独自でやると目にたつ処だらけになってしまうのですが、本当に良く仕上げっていると感じます。この写真で床廻りにはウットリとします、床框と琵琶台の面皮の束との取合いの処やチリ際、絶妙と思います。それといつも楽しみなのが襖紙なのですが、欄間の直線との対比で柔らかさを醸し空間に表情を造っているのでしょうか。「異風になく結構になくさすがに手際よく目にたたぬ様よし」私などが口に出来る言葉ではありませんが、そのものと思います。
前田
2007年11月18日 02:28
何て事のない造形のようで、結構その裏では各種の材料の出入りに注意を払い、チリの具合を慎重に見極めて作る必要がある場所です。床柱、床框、琵琶台束、琵琶台天板、落とし掛け、琵琶台落とし掛け、琵琶台柱、書院、と結構な素材をひとつ場所に入れ込んでいるからです。その一つずつに少しずつ好みを入れ、全体をこの場所の形に結びつける作業です。
お尋ねの襖紙ですが、私はこの柄如何で空間がさほど変わるとは考えておりません。むしろしっかりとした空間寸法が漲っておれば、どのようなものを持ってきても、きちんと抑制されたものになるはずだと思っています。欄間も趣向はさまざまですが、室内空間と接続する空間をどのように捉えた構成とするのか、が意匠を決めるポイントだと考えております。一概に形から入ってしまうと、それこそ本末転倒になりますからね。偉そうなことを申し上げ失礼お許し下さい。

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