ひかりつけ

S邸茶の湯サロン、久しぶりに進捗報告を。
いよいよ現場が動き出した。
町中の商店街という立地条件のため、工事に難航を極める。
作業車が停められない、資材の搬出入問題、作業場が取れない、などなど。
当初から想定していたものの、いざとなると思ったより手間が掛かる。

3階と1階から攻めて、2階を後回しにする段取りが組まれた。
3階は仕事が少ないため、1階は新装開店に間に合わすための配慮である。
内部は全て解体され、鉄骨の骨組みだけとなった。きっとS君も感慨無量だろう。
まず私としては、平面寸法が入るのかが最も気になるところ。
早速、啓君に寸法を出して貰った。特に2階の茶室には炉壇を埋め込むため、鉄骨のスラブを抜く必要があった。
地縄の結果、幸い炉壇部分も、既存の鉄骨梁とぶつかることなく納まるようでひと安心。平面も図面通りに納まった。しかし、ひとつ間違えば納まらないギリギリの寸法でもあった。

ご存じのように、茶室は「京間」という畳で構成される。
このような内装仕事の場合、既存の建物寸法に左右されるが、出来れば満足な寸法で納めたいのが本音だろう。
6.3尺X3.15尺という畳寸法が基準となるが、とにかく無事に納まった。
この点が新築と違い、改修工事の厳しいところだ。

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早速大工が入り、少しずつ組み立てていく。
1階のみせ、小上がりが重要なところとなる。
まずは上がり框を納めて床(ゆか)を決める。次に中の床柱を立て、床框を入れていく。
床周りは、2階の本席と重ならない取り合わせとした。
床柱は香節丸太とし、床框には檜錆び丸太、相手柱はおとなしい杉磨面皮丸太を取り合わせた。丁度現場に行った折、樋口さんが気持ちを集中して床框の”ひかりつけ”をしていた。
「ひかりつけ」とは、丸太との出会いの仕事を指す。
この場合、角柱だと”大入れ”といって框の断面と同じ形に床柱を彫り、框を彫穴に呑み込ませて納める。しかし丸太同士の接合でそれをすると、一方へめり込んだ姿になって見苦しい。そこで出会う部分の微妙な丸みに合わせて、片方の丸太を削り取って合わせていく。

写真は、床柱の丸みを型に取っているところ。か細い割竹を合わせて金具で押さえた道具を用い、それを丸太に宛って型を取る。その丸みを框に移して削り合わせるのである。

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そうすることで、丸太から丸太が生えてきたような姿となる。この仕事を”ひかりつけ”と呼んでいる。丸太を扱う上では定番の仕事である。
手間は掛かるが、出来た姿は美しい。
床框は節を3つ入れて正面を見立て、床柱の香節(こぶし)と取合わせた。


床柱の脇には亭主の出入口がつく。これを火灯口として整えた。
まるで「小さな茶室のよう」、と宮本さんはいう。S君も大満足のようだ。
火灯の形を現場で決める。
S君も小さな身体ではなので、あまり尖った形にすると出入りに窮屈だろう。利用勝手を思い、少しでっぷりとした丸みをつけてみる。
ここは左官の塗り回しで納めねばならない。まさに左官の勝負どころだ。

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この小上がりは、客に道具をプレゼンする「商い」の場所でもある。
「道具を飾れる場所をつくって欲しい」と、S君から設計時に依頼を受けた。
そのためもあって、勝手付きに地袋と棚を設けている。
棚は違い棚としたが、現場で上棚の束の位置に迷う。結局吊り束としたのだが、結果は良かったようだ。筆返しも書院ではないのだからと、州浜の形を入れてみた。
炉は向切りとし、茶道口の関係から逆勝手となった。
2階の二つの席とも本勝手なので、却って面白い使い方が出来るかも知れない。
そう、S君と話している。

  (前田)

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この記事へのコメント

くろさか
2007年06月15日 18:57
お邪魔いたします。
ブログで平面とパースを見た時から、ここの小上りと土間~玄関の造りを前田先生がどう魅せてくれるのかとても楽しみにしておりました。「床柱の香節丸太、床框に檜錆び丸太に節を3つ入れて・・・」その風景が浮かんだ時、思わずニヤリと。当社の重が「前田先生は上手くくづせるのよ、とても良い感じに何とも良い感じに」と嬉しそうに語っていたのを思い出します。山口様邸では照明の項が続いておりましたが、ここの小上りの照明も楽しみです。パースではダウンライトのようですが、正面から入ったときボウと浮かんだ空間になるのか、全体と統一された空間になるのか、いづれにしても楽しみであります。新五十鈴茶屋といい知識・技術・意識とても高いものを見せていただきまして、私などがコメントするのも恐れ多いようで、ですがとても勉強になりまして本当に毎回楽しみにしております。梅雨時でもあります、お体ご自愛くださいませ。
前田
2007年06月19日 02:25
いつもコメント有り難うございます。なかなか事務所に帰れなくて、コメントが返せない状態が続いておりますが、失礼お許し下さい。
ご指摘の通り、果たしてこの部分、思ったように出来るかが難しいところです。店を重視しての小上がりですので、茶室として作ってしまっては、そぐわなくなり兼ねません。結果を厳しい目でご覧下さい。
それに加え、店から玄関辺りの雰囲気が最も重要なところだと私も認識しております。返って2階茶室は、決まった雰囲気を醸せる場所であり、この導入部の空間が今回の改装にとっての勝負だと思います。
また工事過程も含めて、どうぞご覧下さい。
厳しいご批評をお願いします。

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